山口・下関に新酒蔵誕生へ 「児玉酒造」の事業継承 銘柄「長門菊川」残す

 山口県下関市菊川町で新たな酒蔵の建設が進んでいる。この地にあった酒造会社を引き継ぎ、「長州酒造」として生まれ変わった酒が、来秋にも味わえそうだ。

 太陽光発電システムの製造・販売などで知られる長州産業(山陽小野田市)が異業種参入し、廃業の危機にあった「長門菊川(ながときくがわ)」児玉酒造の事業を昨年継承した。「長州酒造」に名称変更し、蔵が老朽化していたため、建物を一新。2階建てで防湿作用がある木造の骨組みと断熱材を使い、12月末に完成する。20年4~6月に試験醸造し、秋からの販売を目指す。直売所も設ける。

 醸造責任者である「杜氏(とうじ)」を務めるのは藤岡美樹さん(44)。香川県の「川鶴」川鶴酒造や三重県の「作」清水清三郎商店で経験を積んできた。藤岡杜氏は「建物を含めてゼロからのスタート。まず酒蔵として美味しい酒を醸せる体制づくりを整えるのが第一段階」と話す。

 藤岡杜氏を含め、5人前後で醸造する。新しい酒の銘柄は現在選定中で、今年末までには決め、商品は純米、純米吟醸など数種類を計画する。醸造用水は蔵の地下にある井戸水で軟水という。目指す酒質は、穏やかな香り、透明感のある滑らかな口当たりでありつつ、酸味があってキレが良い。食事と楽しめ、飲み飽きしない酒を醸すのが目標だ。

 児玉酒造の銘柄「長門菊川」は残す。「地元の人々に愛されてきたことで蔵は存在し、私たちが引き継がせてもらっている」と藤岡杜氏。こちらは元々地元で飲まれていた普通酒の味にできるだけ近づける。

 周辺では、代表的な「山田錦」や県オリジナルの「西都(さいと)の雫(しずく)」などの酒米が栽培されている。長州酒造では、数年醸造して酒質に一定のめどが付いたうえで、菊川町産酒米と県開発の酵母両方を生かしたお酒に力を入れたい考えだ。藤岡杜氏は「地元の人々の信頼があってこその地酒。こつこつまじめにやって知ってもらい、ご縁をいただければ、地元の米を使って挑戦したい」と意気込んでいる。

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